1980年に設立された青葉仁会(あおはにかい)は、知的・身体障がい者の支援施設を拡充していきました。設立から、株式会社モンベルとの提携(1991年~)や地域連携を深め、飲食店や農園、石鹸や、木工、菓子などの工房を展開してきました。地域貢献と多様な就労支援を通じ、誰もが活躍できる社会を目指し、30年以上にわたり進化を続けています。
今回は樽井氏に「生駒山麓公園内カフェ」にて、インタビューを行いました。
子どもたちや地域の方が集う野外活動センター
青葉仁会が運営する「山麓カフェ」では、製造工場、物販、そしてレストラン(宿泊施設併設)を手がけ、お菓子の製造も行っています。施設で使う食材は敷地内で栽培しており、その管理は「いろどり班」というグループが担当しています。玄関の花壇整備や育苗も彼らが行っています。現在、約60名が運営に携わっています。
この「山麓カフェ」が入る建物は生駒市が所有する行政施設です。青葉仁会は指定管理者として10年以上施設の管理を行っています。もともとは生駒市が直接運営していましたが、「より良い学習機会を提供できないか」という市の意向により、外部への運営委託が始まったと聞いています。
青葉仁会が指定管理を始めた当初は、企業(株式会社モンベル)と社会福祉法人が共同で行政施設を運営するという形は、日本で初めての試みだったんです。青葉仁会の事例をきっかけに、同様の取り組みが全国各地で広まったほど、当時は非常に珍しいパターンだったんです。
なぜこんなに事業が幅広いのか
これだけ事業が幅広い事業所は珍しいかもしれませんね。
それは理事長の明確な方向性によるものです。私たちは利用者さん一人ひとりに合った仕事を見つけることを大切にしています。「この子なら、この仕事が合いそうだ」「これをやってみたい」という声があれば、「じゃあ、それを新しい事業にしよう」と、その子のために仕事を作ってきました。例えば、水に触れるのが好きな子がいれば、「じゃあ、水を使って紙すきをしよう」といった形で、次々と新しい事業が生まれて、今に至っています。
「成長のプログラム」で可能性を引き出す
もし、ある作業をB型事業所の仕事にできる可能性を見つけたら、より高度な作業ができるようにプログラムを組んでいくんです。そして、その高度な作業ができたら、それに見合う賃金をお支払いしています。
段階的にできることが増えると、本人も嬉しいですよね。
障がいがあるかないかに関わらず、「自分ができた」という達成感や、「少し成長できた」という実感は、生きる上での一番の喜びだと思うんです。
だから、私たちはその部分をどう引き出せるかを常に考えています。私自身、外部から青葉仁会に入り、他の施設もたくさん見てきましたが、他の施設と青葉仁会の大きな違いは、まさにこの「成長のプログラム」ですね。
多様な選択肢が能力を開花させる
青葉仁会には、たくさんの「選択肢」があるんです。私たちは、利用者さんが多様な仕事に関われる環境そのものを作っています。そうした選択肢をどんどん増やしていこう、という方向性で法人を運営してきました。
例えば、健常者と呼ばれる立場だとしたら、「お菓子作りたい」「旅行会社に行きたい」「プログラマーになりたい」など、様々な選択肢がありますよね。自分の好きなことや能力に合わせてチャレンジするチャンスがある。しかし、障がいのある方々には、現状そのチャンスが少ないんです。だから、自分の中に眠っている能力を開花させる機会がなかなかありません。
しかし、青葉仁会はその選択肢を増やすことで、利用者さんの中に眠っている、ものすごく高い能力を引き出せるようにしています。チャンスを見つけ出す、という感覚に近いかもしれませんね。そうした環境が青葉仁会にあることが、本当にすごいことだと感じています。
働くスタッフの想いとビジョン
青葉仁会の利用者さんのための環境は本当に素晴らしく、スタッフ全員がそう思っています。少なくとも、青葉仁会が目指す方向性がそこにあると強く感じていますね。環境だけでなく、職員だけでなくパートさんたちも皆、素晴らしい方ばかりです。青葉仁会を愛するスタッフもたくさんいますよ。
スタッフもパートさんも含めて、皆にビジョンが浸透していると感じました。そのビジョンは、どのようにして皆さんの軸として落とし込まれているのですか?
スタッフとして新しく入ると、なかなかそうした理念に触れる機会は少ないものですが、青葉仁会では理事長が定期的にお話しする機会を設けています。今はまさに創設者の方々がいらっしゃる世代なので、直接その思いを聞くことができ、理念が伝わりやすい環境にあります。時代が進み、2代目、3代目へと継承されていく中で、このビジョンをきちんと引き継いでいくことが必要になると思います。