AI農業のAGRIST株式会社

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Microsoftと連携したAI農業の可能性にわくわくしています。代表取締役 齋藤潤一

2024年08月29日 インタビュー

― 御社は2019年の創業以来、「100年先も続く持続可能な農業を実現する」をビジョンに掲げ、最先端のAI農業を推進してきました。最近では、「Microsoft AI Co-Innovation Lab」とのコラボレーションによって、高精度な収量予測AIの開発に成功したニュースが発表され、注目を集めています。あらためて、AIを農業に活用すると、何が起こるのでしょうか?

AI活用によって、農業経験がない人でも、農業を始めるハードルがぐっと低くなります。

これまで農業を始めるときは、ベテラン農家さんの元で数年かけて修業するのが一般的でした。修業後は独立のための資金をJAから借り、3年ほどかけて返済しながら農業を学んでいく。農業で成功するには「勘と経験」が欠かせない、というのが世間の“常識”。お寿司屋さんの徒弟制度に似た状況だったんです。

その“常識”が、AIを使うことで劇的に変わろうとしています。「勘と経験」に頼ったビジネスモデルを脱し、未経験の新規就農の方でもすぐに十分な収穫量を目指せるようになります。実際にAGRISTの社員である新規就農者が、ベテラン農家さんの1.5倍の収穫量を上げた例もありますよ。

現在の日本の食料自給率は38%と言われていますが(参照:農林水産省が発表した令和5年度のカロリーベース食料自給率※)、AI農業を活用した農業が広がれば国内の収穫量がより効率的に増加し、「食」の課題解決は十分可能だと考えています。これはものすごいイノベーションだと思いますし、無限の可能性に僕はワクワクしています。

Microsoftからの開発支援を受けて、AI「Copilot」を活用

― 1.5倍の収穫量とはすごいですね! AGRISTで開発しているAI農業は、誰でも簡単に使えるものでしょうか?

はい。先にリリースしたAGRIST AiのLINEツールでは、生身の人間と会話するように農業に関する質問が可能です。

また将来的には、農場をモニターチェックしながら、「ここのピーマンとっていい?」と聞けば。「ここはとらないでください」「このエリアを重点的にとってください」などと答えてくれるようになります。私たちが描く未来の農業では、まるでベテラン農家さんが側に付いてアドバイスしてくれるかのようなサポートが得られるんです。

― それは心強いですね。これまでに農業で活用されてきたAIとは、何が違うのでしょうか?

センサーを活用した例はありますが、MicrosoftのAI「Copilot」とサーバー「Azure」を活用してデータの収集・解析・改善案の提案までAIにさせている例は世界中どこにもありません。

冒頭におっしゃってくださったように、僕たちは今、世界的巨大企業であるMicrosoftと農業に特化したAIを共同開発しているのですが、これが本格的に実現すれば世界初となります。

また、「自社農場を持っていること」も僕たちのユニークな強みです。AIを活用してデータを集め、解析作業をやり続けるのにはお金も時間もかかりますが、AGRISTは自分たちの農場ですぐに実装・検証ができ、得られたデータをもとにAI農業をスピーディーに開発が可能なんです。

収穫量が増えればそれだけデータも増えますし、データが増えればAIの解析精度はさらに高まる。その結果がさらに収穫量アップにつながる。このサイクルを回すことができるのは、農場を持ちながらAI開発を進めている僕たちならではの強みだと思っています。

ラクして楽しいスマートな農業を実現したい

― これから農業へ参入するのはチャンスと言えそうですね。AI時代の農家さんが収益性を高めるために重要なポイントは何だと思いますか?

育てやすく売れやすい種類の野菜を育てることは大事だと思います。

例えば苺は、単価が高く美味しくて魅力的だと思われがちです。でも実は収穫するまでに膨大な時間と手間がかかっていて、時給に換算するととても低い。その点、ピーマンやきゅうりは簡単に育てることができて売りやすい。

だから収益性を考えるとピーマンやきゅうりのほうが魅力的なんです。作るだけでなく、「売る」部分までしっかりと設計できるかどうかが重要だと思います。

最近では、「食べチョク」や「ポケットマルシェ」などのインターネット産直通販をうまく活用している農家さんも増えていますね。これまで収穫した野菜はJAにまとめて買い取ってもらうもので、販売ルートが限られていました。

JAに買い取ってもらうと安定した収入が見込める一方で、農家がどんなに努力して糖度が高いものや美しいものを作ったとしても、買い取られる価格は一律同じ。もちろん、これが悪いと言っているのではなく、安定供給の面でJAが果たしている社会的役割は非常に大きいと思っています。

「市場の安定」を守る基盤と併せた新たな選択肢として、農家さんがこだわって作った野菜を自由な価格設定で販売できる仕組みが整ってきたことは素晴らしいなと。上手に販路を使い分けながら、売り上げを伸ばしている農家さんも増えてきていますね。

実は、あまり表に出てこないだけで、しっかりと利益を上げて儲かっている農家さんは結構いらっしゃるんですよ。僕の感覚としては、全体の2割です。

儲かる農家の特徴とは?

― 「儲かっている農家さん」には、どんな特徴があるのでしょうか?

皆さん共通して言えるのは、ハウスの中が非常にきれいなことですね。仕事ができるビジネスマンの机周りは整理整頓されていると言われますが、それと同じです。

そして「緻密」です。勘と経験だけに頼らず、過去の記録を細かく管理しています。

しかしながら、真摯に農業と向き合ってきた農家さんですら、昨今の急激な気候変動には太刀打ちできなくなっています。だからテクノロジーの力が必要なんです。僕らが開発しているAGRIST Aiを活用した農業であれば、膨大なデータを解析することでより正確な気象予測が可能になります。ゲリラ豪雨の可能性だって予測して早めに対処することができます。テクノロジーの力を借りれば、もっと「ラクで楽しく幸せな農業」が実現可能なんです。

―「ラクで楽しい農業」、最高のフレーズですね。

本来、農業は幸せに働くことができる産業なんです。人間に幸福感を抱かせる神経伝達物質は「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」「テストステロン」の4つだと言われていますが、そのすべての要素を農業は備えています。

朝、太陽の光を浴びることで「セロトニン」が分泌されてポジティブな気持ちになる。集団作業を行うことにより「オキシトシン」、収穫したときには達成感から「ドーパミン」が生成される。重いものを運んで筋力がつき、「テストステロン」も分泌される。だから農家さんたちは、肌ツヤが良くて幸せそうに働いている人が多いですよ。

その上、しっかり利益も出せれば楽しくなりますよね。儲かっている農家さんは、皆さんお子さんが自ら進んで跡を継いでいます。楽しく幸せそうに働く親御さんの姿を見ているからでしょうね。テクノロジーを活用して「ラクして楽しく幸せな農業」の風景をつくる。そんな未来一緒にを実現できる農家さんを、これからもっと増やして応援していきたいです。


日本の食料自給率:農林水産省 (maff.go.jp)

インタビュー/宮本恵理子 構成/夏野稜子、宮本恵理子

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