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6次産業化とは?実際にやってみた事例を踏まえて解説

2023年06月19日 2023年

6次産業化とは?実際にやってみた事例を踏まえて解説

6次産業化とは農業・漁業・林業などの1次産業従事者が、生産だけでなく、加工の2次産業、販売の3次産業を一気通貫で行う取り組みのことです。

生産物の付加価値を高め、収益性の向上や安定した事業運営を目的としています。

今までの1次産業では主に生産活動に注力し、販売やブランディングに関しての取り組みが弱く、農業・林業・漁業従事者の所得が不安定でした。

そんな現状を打破すべく国を挙げての6次産業化が進められています。

(農林水産省:農林漁業の6次産業化

今回は6次産業についての解説と、AGRISTが実際に取り組んだことをお伝えします。

6次産業化とはどんなもの?

6次産業化の解説画像

6次産業化とは農業・漁業・林業のような1次産業の生産者が2次産業の加工、3次産業の流通販売までを手掛ける取り組みの事です。

6次産業=1次産業(農林漁業)×2次産業(加工)×3次産業(販売サービス)

上記のような掛け算で表されることが多いです。

※農商工連携のいう言葉も存在しますが、これは農家や漁師が2次産業者・3次産業者と連携し協業することを指しており、一気通貫でやらない点で少し意味合いが違います。

6次産業化に取り組む背景

6次産業化に取り組む背景として、1次産業が儲からなくなっていることが挙げられます。

消費者ニーズが多様化し、手軽に食べることができる冷凍野菜、ブランド化している農作物、有機野菜などの台頭により、市場競争が激化しており、いわゆる“今までの普通の野菜”が売れにくくなっています。

また、ふるさと納税の返礼品の普及により、近所のスーパーで買うよりも産地直送で美味しいモノを選ぶ消費者も現れました。

こういった消費者ニーズの多様化により、農作物を生産するだけでは所得が伸びにくくなっており、1次産業従事者が所得を向上させるには6次産業化が必要不可欠と言われています。

こういった時代背景も相まって、農水省でも6次産業化を推奨しており、補助事業などの取り組みも行われています。

>>農林水産省 農林漁業の6次産業化

これまでの1次産業との大きな違い

従来の1次産業では、生産物をJAや市場、仲卸業者に販売をすることが殆どで、自ら販路を持っている農家や漁師は殆どいませんでした。

それ故、プライシング(値付け)ができず、生産物を言い値で買い叩かれることもしばしばありました。

一方で、生産物の全量買い取りのカードを貰えるので、一概に悪いと言えないのが実情です。

6次産業化ではこれまでの1次産業と違い、プライシングのカードがこちら側にあります。

値付けの権利がこちら側にあるので、付加価値を付けて好きな値段で販売することができるので、儲かる幅が大きくなると考えられています。

また、野菜や魚などは競りで価格が決定されますが、いくら競りが行われるとは言え、おおよその価格感は決まっています。

AGRISTが栽培しているピーマンは全国どこでも、1kg/¥400前後で取引されており、1kg/¥1,000みたいなミラクルは起こり得ません。

※大田市場のピーマンの市況

加工を施し、付加価値を付けて、ピーマンを1kg/¥1,000で売ることができるのが6次産業化の最大の魅力で、これまでの1次産業との大きな違いになります。

6次産業化の定義と具体的な取り組み

アイキャッチ画像

6次産業化の理解を深めるために2つの事例をご紹介します。

1つは6次産業化の事例、1つは1次産業×3次産業の事例になります。

農作物を加工販売

6次産業化アワード大臣官房長賞 くしまアオイファーム(令和3年度)

農水省が6次産業化の優良事例として紹介した、くしまアオイファームさんです。

芋の栽培→加工→販売を一気通貫で行っており、6次産業化のお手本のような取り組みをされています。その功績が認められ令和3年度の6次産業化アワードの大臣官房長賞を受賞されています。

栽培した芋を加工し、キッチンカーで販売し、生産~加工~販売を一気通貫で行っている事例です。

直売所

直売所の画像

引用:JA宮崎中央会

直売所については、1次産業(生産)×3次産業(流通・販売)のモデルになります。

加工品を直売所にて販売する場合は、1次産業×2次産業×3次産業のモデルとなり、6次産業化の領域になります。

微妙な違いですが、6次産業の理解を深めるために覚えていた方がいい概念です。

6次産業化の定義

6次産業化=1次産業(生産)×2次産業(加工)×3次産業(流通・販売)

上記のように定義付けされています。

1次産業の生産者が2次産業と3次産業を一気通貫で行い、新たな付加価値を生み農業の可能性を広げる取り組みと認識されています。

農林水産省:6次産業化とは

6次産業化のメリット・デメリット

アイキャッチ画像

6次産業化のメリット

6次産業化のメリットとしては、

  • 所得向上
  • 経営の安定
  • 地域の活性化

上記が挙げられます。

生産物の価格は市況に依存するので、プライシングのカードがこちら側にはありません。

しかし6次産業化した場合は、プライシングはこちら側で決定できますので、所得の向上や経営の安定化が見込めます。

また、加工や販売、流通により雇用が生まれ地域の活性化にも期待できます。

6次産業化は地域の経済の発展にも寄与すると考えられています。

6次産業化のデメリット

6次産業化のデメリットとしては、

  • 多額の投資が必要
  • サプライチェーンの構築が必要
  • 1次産業とは異なる専門性が必要

上記が挙げられます。

加工や販売をするためには、数千万円~数億円単位の初期投資が必要になります。

ここで二の足を踏む人が多いのが実情です。

また、生産→加工→流通→販売のサプライチェーン構築にも多大な時間とコストが必要です。

1次産業とは異なる専門性が必要となり、サプライチェーンの構築が参入障壁となっています。

6次産業化の難しさ

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何をどこで生産しどうやって販売するのか

6次産業化で大事なことは、シンプルですが『何をどこで生産しどうやって販売するのか』です。

どんな農作物を栽培するのかで6次化が成功するかどうか半分は決まってしまいます。

付加価値の付けにくい農作物、加工に向かない生産物を選択した場合は6次化の恩恵を得られない事があります。

例えば我々が栽培しているピーマンは、付加価値が付きにくく加工をしても価格が上がりにくい性質をもっています。

6次産業化に参入する場合、加工をしても価格が上がりにくい農作物が存在することは覚えていて欲しいです。

また、場所についても非常に重要です。

マーケット(消費地)に近い場所で生産・加工を行うと流通費用を抑えることができます。

それに加えて鮮度が重要な農作物も多いので、鮮度保持の観点でもマーケットに近いと有利になります。

サプライチェーンの構築

前章で少し触れましたが、生産→加工→流通→販売のサプライチェーンの構築が非常に難しいです。

各工程でコストがかかってくるのでプライシングをしっかりと行い、利益の出る価格設定が必要です。

また、販売先を複数持ちリスクを分散することも重要です。

複数の販路を持ち、価格の高いところに多く流通させるようなチューニングも儲かるためには必要です。

値下げの打診や契約満了などの外的要因も視野に入れつつ、サプライチェーンを構築する必要性があります。

2024年問題への対処

働き方改革関連法により、2024年4月1日以降トラックドライバーの就労時間が大きく変更されます。

自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され、輸送能力の縮小、運搬コストの上昇が危惧されています。

厚生労働省:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について

実際に宮崎県のピーマンを大阪に輸送する場合、現状では1日で届いていたものが、2日かかるシミュレーションも出ています。

6次産業化の参入障壁になると言われています。

D2Cの難しさ

近年、1次産業の商品を直接消費者とやり取りできるサービスが普及しています。(食べチョクさんやメルカリさんが代表的です。)

1次産業従事者は販路の1つとして、消費者は直接農家から新鮮な野菜を買えるとあって人気が高まっているサービスです。

しかし人気がある一方で、1次産業従事者にかなりの工数がかかってしまうのが実情です。

従来の業務に加えて、注文→梱包→発送などの付帯業務が発生します。

少量であれば問題はないのですが、ピーマンを例にすると、反当り1ヶ月に1t~2tの収量が上がるので、全てをこのようなサービスで出荷するのは不可能です。

大量に出荷する場合は、市場やJAなどの全量買い取りが役に立つでしょう。

また、クレームやアフターフォローが必要な場合もあるため、D2Cサービスを利用する場合はそれ相応の時間とコストがかかることを忘れてはいけません。

D2Cサービスに一長一短あるのは否めません。

AGRISTが6次産業化で実際にやってみたこと

AGRISTが取り組んだ6次産業化の事例

ピーマンチップス

AGRISTでは宮崎食品開発センターという公共施設を使用し、ピーマンチップスの開発を行いました。

各都道府県にも同じような公共施設がありますので、殆ど費用をかけずに開発が可能です。

※使用料は数千円~数万円程ですので経産省のリンクからお問い合わせください。

AGRISTでは、真空フライヤーを使用しピーマンチップスにチャレンジしました。

目的としては6次産業化と、廃棄される規格外のピーマンを使用して新たなキャッシュポイントを生むためです。(ピーマンの反収は14t程で約3%~5%の400kg~700kgが規格外として出荷できない状況)

一般的な農家さんは30アール規模で営農されているので、少なくとも1t近い規格外の出荷できないピーマンが出ています。

実際に1kgのピーマンをスライスし、真空フライヤーで揚げたところ100gのピーマンチップスが出来上がりました。(味は好評で、お酒のあてになりそうです。)

ピーマングミ

AGRISTが取り組んだ6次産業化の(ピーマングミ)の画像

お取引のある企業様にご協力をいただき、ピーマングミの試作も作ってみました。

ピーマンをペースト状にし、砂糖・レモン果汁・ゼラチンでグミにしたものです。

甘いながらもピーマンの風味を感じ、新しい感覚でした。

しかしながら、お菓子メーカーがしのぎを削っているグミ市場に参入して、ヒットを飛ばすことの難しさを感じ、グミについてはペンディング中です。

このように失敗も付き物なのが6次産業ですが、スモールで試作が作れるのも魅力です。

実際に加工をやってみて感じたこと

AGRISTが取り組んだピーマン加工の写真

実際に6次産業化に向けた取り組みを進める中で、想像以上にコストがかかることを実感しました。

規格外のピーマンを使用することから、形が不揃いで下処理に時間がかかり、揚げ時間(加工時間)もバラバラになることから、正規品のピーマンの加工よりもコストや工数が乗ってくることが分かりました。

規格外で捨てられるピーマンを活用するので、原価は抑えられますが、商品化までの道のりは非常に厳しく、一朝一夕で6次産業化が成功するのは難しく思いました。

ネガティブなことを書きましたが、競合他社も同じ状況です。

6次産業化をやり切ったプレイヤーが勝つ仕組みになっていますので、可能性を秘めている領域と言えます。

6次産業化を進めるために補助金を使用する

アイキャッチ画像

実際に6次産業化に取り組んで感じたのは、資金とリソースの潤沢な大企業が圧倒的に有利で、地方の中小零細企業や個人ではなかなか手が出せないということです。

その為、資金面では国や都道府県の補助事業を活用すること、リソース面では各都道府県の試験場を利用することがベターだと感じました。

農水省では農山漁村発イノベーション(6次産業化等)支援策について(予算等について)という補助をやっていたり、AGRISTの本社のある宮崎県では【令和5年度】宮崎市産農林水産物活用商品認定事業という補助があります

6次産業化については時間とコストが掛かってくるので、『JAや市場に全量出荷』する人も多いです。

プライシングできないなら量でカバーするのも儲かる一つの選択肢です。

大事なのは自分たちの1次産業をどう儲かる方向にシフトするかです。

まとめ

6次産業化の説明画像

6次産業化とは

6次産業化とは1次産業従事者が、1次産業(生産)×2次産業(加工)×3次産業(販売・流通)を一気通貫で取り組み、付加価値の高い商品を生み出し、所得を向上させる取り組みの事

6次産業化が必要になった背景

・消費者ニーズの多様化により、手軽に利用できる冷凍野菜、有機野菜や環境に配慮して育てられた野菜などが支持されるようになり、1次産業従事者にもマーケットイン的な思考が必要になった

・行政も6次産業化の必要性を考え、農水省が中心となって補助事業なども充実してきた

6次産業化のメリット

所得の向上…付加価値を付け販売することで、生産物の単価を上げ販売できる

経営の安定化…青果物市況(競り)に依存せず、安定的な収益が見込める

地域の活性化…加工・流通・販売を通して雇用の創出が期待できる

6次産業化のデメリット

多額の初期投資が必要…多額の初期投資が必要で二の足を踏んでいる人が多いのが実情

サプライチェーンの構築が必要…加工・流通・販売のサプライチェーンの構築のハードルが高い

1次産業とは異なる専門性が必要…全く違う領域の知識習得が必要

6次産業化の難しさ

何をどこで生産し販売するのか…マーケット(消費地)の近くで展開するのが有利

2024年問題…輸送コスト増や輸送時間増による問題が発生する

D2Cの使い方…D2Cサービスを手軽に始められる反面、工数増や量を捌くことの難しさがある

6次産業化の勝ち筋

公的補助を使う…国や都道府県で6次産業化補助があるので活用する

参入障壁は高いが競合他所も同じ状況でやり切った組織が勝つ

以上が、6次産業化についての解説とAGRISTが実際に取り組んが内容のご紹介でした。

AGRISTでは、農業参入を検討している企業向けのコンサルティングや、収穫ロボットを使用した次世代農業の提案を行っております。

お気軽にお問い合わせください。

written by Shinya Oda

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