産業や生活の新しい在り方を実現してくれるロボットは、あらゆる分野の技術が統合されてできる複雑な機械ですが、開発をすれば終わり、というわけではありません。
広く普及するための「量産」ができてはじめて一連のプロダクトが一区切りを迎えます。
その要となるのがプロセスエンジニアです。
開発の花形ではないかもしれませんが、新しい技術を世の中に広めるために生産の効率化を測る業務を担う、とても大切な存在です。
それは、農業シーンでも同じ。国家プロジェクトであるスマート農業を成功に導くために、いかにこのポジションが求められているのか、本記事で解説していきます。
生産工程のプロフェッショナル
プロセスエンジニアの仕事概要
プロセスエンジニアの仕事は、料理で例えるとレシピづくりの担当です。
開発者がつくり上げた新しい料理の作り方を整理し、材料やサイズ感、調理時間など、効率化とクオリティの高さが両立した料理が常に出来上がるようにまとめる業務を行います。
全ての行程を一人で担当することは珍しく、各部品の製造フェーズや品質の検査などにおいて、チームに分かれて担当を持つことが多いです。
良くプロセスエンジニアと比べられる生産技術職は、レシピを実現するために、高性能な包丁や鍋を作り、揃える仕事ですが、企業の中で、プロセスエンジニアの重要度が高い場合、これらを横断的に担っていることがあります。
その分、厚待遇である傾向にあります。
やりがい
コスト意識を保ちつつ、設計通りの品質を実現するためにいかに工夫するか。それが、プロセスエンジニアの腕の見せ所であり、やりがいです。
ロボットの開発は、ラッキーな偶然で凄い1台が出来たのではあまり意味がありません。
設計段階では理想的なロボットであったとしても、部品の仕入れ先の再検討や、加工に掛ける時間など、製造・量産工程では多くの調整が発生するため、品質が変わってくることがあります。
モノづくりの経験値やアイデアを活かして、品質と効率の最大化を図る。プロセスエンジニアはそんな意義あるポジションなのです。
向いている人物像
生産工程をマネジメントするプロセスエンジニアは、どのような人材が向いているのでしょうか。
生産工程では「1℃高く加熱してみる」「部品を0.1ミリ薄くしてみる」など、クオリティの高さと量産を実現するため、多くの工夫を凝らします。
とても細かな検証を繰り返し、ときにトレードオフをも判断していくため、物事を突き詰めて考えることが好きな方に向いています。
スマート農業などでは、今までになかった新しいロボットを開発することが多いため、世の中への技術の広がりが自分の仕事の成果に直結します。
キャリアを積めば、ブームの火付け役として業界に名前が知れ渡ることもあります。
また、製造現場をマネジメントするポジションでもあるため、コミュニケーション能力も大切です。
「こうすれば効率的になるのではないか」というアイデアが浮かんでも、むやみやたらに指示して良いというものではありません。
社内のメンバーや外部の委託先などに共有し、実践してもらうためには、信頼関係を築く事ができる人物であることが必要になってきます。
上手く連携を取ることができる能力を持っている人は、活躍しやすいでしょう。
農家の課題をテクノロジーで解決するIT企業の存在
人材不足に悩む農家
農林水産省が発表した2015年の調査結果は、農業従事者の平均年齢が66.4歳。50歳以下の若手と言われる働き手はわずか12.0%しかいないのが現状です。
トラクターや耕運機など、熟練の技術が必要となる農業機械の扱いにハードルを感じて、若者の新規流入が減っているというデータもあり、人材不足が深刻な問題となっています。
そんな現状を打破すべく、政府は「スマート農業」というプロジェクトをスタートさせました。
これは、人力が主体であった農業を「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」へと進化させることで、人材不足や後継者不足の解決を図ろうというものです。
AGRISTという注目企業
スマート農業を推進するなかで、ここ数年、破竹の勢いで成長を続けている「AGRIST株式会社」というITベンチャー企業があります。
AGRISTは宮崎県の企業で、「AI・人工知能を搭載したピーマンの自動収穫ロボット」を、農家と一緒になって開発したことにより、国内のビジネスプランコンテストで8つの賞を受賞しています。
開発した「ピーマンの自動収穫ロボット」は、AIによって収量分布をデータ化し、画像解析機能で大粒のピーマンだけを選定して収穫し、ハウス内を巡回して病気の早期発見を知らせてくれる一台です。
優れているのは機能面だけではなく、その導入費用を比較的抑えられるという点にもあります(軽トラック一台分程度で導入可能)。
そして、昼夜問わず稼働してくれます。このコストパフォーマンスの良さを実現したことも、高く評価された理由の1つです。
今や農業用ロボット開発といえば「AGRIST」。この名前を知らないことは、むしろマイノリティとなってきています。
最新技術の”当たり前”をつくっていく人材
農家への最も直接的な貢献ができる
プロセスエンジニアは、AGRISTのように、農家と一体になって作ったロボットにおいても欠かせない存在です。
今後、同社は全国の農地にもその課題解決力を広げていくビジョンを持っているため、量産化を実現することが非常に大切。
創意工夫によって生まれた宮崎の新技術を、直接農家の方々へロボットを届けるために、今、本当に求められている職種なのです。
「持続可能な農業の実現」を叶えるポジション
AGRISTが掲げるミッションは、「100年先も続く持続可能な農業を実現するために、テクノロジーで農業課題を解決する」。そのために現在、100名規模の採用活動を行っている真っ最中です。
品質保証・製品検査・製品評価・生産技術・治工具設計・サービスエンジニアといった、生産工程の上流~下流全てに、横断的に関わるのが、同社のプロセスエンジニア。
ミッションを成功に導き、最新技術を「当たり前のもの」にするために、なくてはならない重要なポジションです。
班長、リーダークラスの豊富な経験が求められる職種ですが、それだけに影響力は大きいです。
この機会に新天地で技術者としてのキャリアを目指してみてはいかがでしょうか。
革新的な新技術を世の中に広める仕事
新たな技術が日々生み出される昨今、その技術を一般に普及させる量産化をマネジメントするプロセスエンジニアの重要度は増しています。
転職する時には、ロボットエンジニアやメカニカルエンジニアばかりに目が行きがちです。確かに、ロボットそのものの企画に携わることは少ないかもしれませんが、製造レシピを作成することで、世の中に大きな貢献ができる貴重な職種を忘れてはいけません。