平成から令和にかけて、政府が打ち出した国家的なプロジェクト「スマート農業」。これは「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」を実現し、農家の人材不足や高齢化、後継者不足の課題を、ロボットによって解決する取り組みです。
メカニカルエンジニアとは、ロボットや機械の仕様決定や設計を主に行う職種ですが、スマート農業においては、その最前線に立つポジションです。農家が抱える課題を洗い出し、それを解決するロボットの全体像を描いて、ロボット製作の指揮を行います。まさに、プロジェクトのリーダーとして活躍するのが、スマートの農業におけるメカニカルエンジニアなのです。
とはいえ、誰にでもイメージがつく仕事ではありません。本記事では、実際の仕事内容や役割について、詳しく解説していきます。
メカニカルエンジニアという職種
ロボット開発のプロジェクトを率いるリーダーポジション
メカニカルエンジニアは、ロボットの仕様決定や機械設計、開発を主に行います。プロジェクトのリーダーとして指揮を執るディレクターの側面と、自分自身も現場に入っていくプレイヤーとしての側面の両方を持ちます。
ロボット開発に関わる職種の中で、最もロボットに向き合うことができる仕事です。
仕事内容の概要
メカニカルエンジニアは別名、ロボット設計技術者、ロボット開発技術者などとも呼ばれ、次のように大きく分けて3つの仕事が存在します。
1つ目は、クライアントのニーズに合わせたロボットの仕様検討です。スマート農業においては、クライアント自身が機械のプロであることが少ないため、丁寧なヒアリングを行った上で、ロボットに必要な機能を提案していきます。今までにないロボットの姿を描くこともあるため苦労もありますが、それ以上にクリエイターとして充実感を味わうことができる仕事です。
2つ目は、実際に仕様を落とし込む設計・開発業務です。ここでメカニカルエンジニアに求められるのは、将来の量産化やコストパフォーマンスを見据えた設計を行うことです。ロボットはただ動けばいいというものではありません。購入し使ってくれるユーザーを想定して、部品の点数や組み立ての工数を減らしたり、防塵防滴に配慮したり、筐体のサイズ感を検討したりと、知識と技術を総動員して最大の成果を目指します。
開発フェーズにおいても、プログラミングやセンサー開発など、多くの業務があります。しかし基本的にはチームで進めていくため、全て一人で背負うことはありません。定期的にクライアントにも状況を共有しつつ、チームを率いて、金型の製造や修正、サンプル品のプロダクトに集中します。
3つ目は、実験・評価・検証・実用化です。サンプル品が完成したら、機能面や耐久性を実験し、効果検証を繰り返します。クライアントにも同席して意見をもらい、製品の完成・実用化を目指します。
その後は、生産技術部門と量産化を進めていくことになります。
求められる人物像
ロボット開発をディレクションするメカニカルエンジニアに向いている人材とはどういう人でしょうか。これについては、仕事の概要からも分かるように、コミュニケーション能力とアイデア力が優れた人、好奇心が強い人であることが求められます。
スマート農業においては、これまでになかったようなロボットを作ることが多くあります。そのため、クライアントのニーズを引き出すコミュニケーション能力やアイデア、好奇心が、プロジェクトの成果に直結するのです。
次に、ロボット以外の分野にも詳しければ、なおいいでしょう。例えば農業について何も知らず、機械の機構に詳しいだけでは、実力を上手く発揮できない可能性があります。経験豊富である必要はありません。日々、何事にも興味を持てることが、ふとしたアイデアに繋がっていきます。
また、サプライヤーとのやり取りなど、近年はグローバルな規模でプロジェクトが進むことも多いため、語学力に強みがあると、大いに重宝されるでしょう。
農家の課題をテクノロジーで解決するIT企業の存在
人材不足に悩む農家
スマート農業が打ち出されるようになった背景が深刻な人材不足であるということは、前述した通りです。農林水産省の2015年の調査では、農業従事者の平均年齢は66.4歳。働き盛りの50歳以下はわずか12.0%です。
人材不足、後継者不足になる理由はどこにあるのでしょうか。これは、農業が体力仕事であることが第一に挙げられますが、その他に、トラクターや耕運機など、農業機械の扱いには熟練の技術が必要であるため、若者の新規参入が難しい、という点があります。
AGRIST株式会社という注目企業
そんな農家の課題を解決するためのロボットを開発している、隠れたIT企業があることをご存知でしょうか。「AGRIST」は農家との連携を密接に取りながら開発を行うスタイルを大切にしているITベンチャーです。
近年開発したのは「AI・人工知能を搭載したピーマンの自動収穫ロボット」。このピーマンの自動収穫ロボットは、AIによって収量分布をデータ化したり、画像解析機能により大粒だけを収穫したり、ハウス内を巡回し病気の早期発見を行うことができる1台です。
導入費用はトラック1台分で、昼夜問わず稼働が可能であり、コストパフォーマンスの良さも実現しました。その結果、国内のビジネスプランコンテストで8つの賞を受賞し、今や農業用ロボット開発といえば「AGRIST」と言われています。
AGRSITでのメカニカルエンジニアは未来を変える人材
ニーズが拡大している農家に貢献できる仕事
宮崎県の会社であるAGRISTは社員を大切にし、のびのびと個性を活かして開発に取り組める環境を整えています。ラボと共同で使う広いオフィスは、全員が気軽にミーティングを行いやすい空間になっています。また、農家との関係性を重要視し、農場がすぐ隣にある立地に会社を構えました。ここで働くメカニカルエンジニアは、収穫ロボットを提案、設計し、部品調達、管理、製作、設置、運用まで、アイデアを活かしながら横断的に活躍しています。
ニーズが拡大しているため、これからは全国の農家へ向けてロボットの開発に着手していくビジョンを発表しています。規模拡大に向けて総勢100名のエンジニアを募集しているため、農家の新たな在り方を提案するやりがいある仕事をしたい方は応募してみるといいでしょう。
農家とのふれあいを通じて、農業の未来に直接貢献する
農家と共にロボット開発に取り組んでいる同社。エンジニアが能力を発揮できるように、農家への理解が深まる制度も用意しています。農業体験を定期的に用意し、農家の方たちと一緒にご飯を食べたり、月1回の勉強会を開催したりしています。
農家の方の声が直に聞ける機会に恵まれているため、エンジニアとして、クライアントを本当に理解した上で開発ができる、質の高い環境が整っています。その日々は、大きなやりがいに満ち溢れているでしょう。
そんなAGRISTですが、社員の収入面もおろそかにはしていません。東京都で働くのと遜色のないレベルをすでに実現。最大年収は1,000万円を超える好待遇を実現しています。
農業の進歩にメカニカルエンジニアは必須
今や、国としてロボットを農業シーンに取り入れる取り組みが行われています。農作業の効率化や人材不足など、人力だけでは解決できない問題を解決できるロボットの存在は、これからの農業に不可欠です。
メカニカルエンジニアは、農業に新たな歴史を刻む「アグリテック」を実現するリーダーであり、日本の在り方を変えることができる影響力のあるポジションです。エンジニアとして積んできたキャリアの使い方に悩んでいるなら、農業という大きなフィールドで活かしてみてはいかがでしょうか。