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”Made in Japan”国産パプリカに新たな息吹を──大和農園が語る開発と挑戦

2025年06月23日 インタビュー

”Made in Japan”国産パプリカに新たな息吹を──大和農園が語る開発と挑戦

農業を取り巻く環境が大きく変化する中、種苗メーカーはどのような視点で品種開発に取り組み、生産者と共に未来を描いているのでしょうか。今回は、開発の裏側から栽培現場の課題や、構想について大和農園 営業担当の伊澤さんへお話を伺いました。(写真:AGRIST FARMにて社員と伊澤さん)

【概要】

名称 株式会社大和農園

URL https://www.yamatonoen.co.jp/

お問い合わせ https://www.yamatonoen.co.jp/contact/ 

HP引用 大和農園グループは、オリジナルブランド品種の育種研究開発を行い、みなさまの食を支えるお手伝いをしております。また、国内及び海外での種苗の卸販売や、家庭菜園の種苗の通信販売も行っております。

「国産パプリカ」で新たな需要を創造する

――国産パプリカの開発背景について教えてください

現在日本の店頭では海外産(オランダ産や韓国産)が多くを占める中で、弊社としては輸入ではない国産パプリカの需要が消費者向けにあるのではと考えました。しかしながら現在スーパーや世間で見られるパプリカの多くは果実サイズが大きく開花から収穫までに3ヶ月ほどかかり、栽培期間が長いことが日本の生産者にとって、パプリカの栽培が難しいと感じる課題でした。この栽培期間を短縮するため、私たちは「ぱぷ丸」や「ぱぷ丸ネオ」といった小さいサイズの国産パプリカ品種を開発しました。

栽培現場の現状と気候変動への対応

現在、私が知る限りのぱぷ丸の生産者様は、南は沖縄から北は岩手県までいらっしゃいます。生産者様は大きく2つに分けられて、露地で小規模に栽培され、直売所等に出荷される場合と大手スーパーさんなどと契約しハウス利用の大規模栽培される場合の大きく2つに分けられます。

当初、「ぱぷ丸」や「ぱぷ丸ネオ」はピーマンを栽培されている生産者様の、露地や粗放的な栽培を想定していました。しかし、実際に蓋を開けてみると、施設栽培で利用いただくケースが意外と多い印象です。

―課題や、品種ごとの特性についてはいかがでしょうか?

以前は赤色の果実が小さい傾向がありましたが、「ぱぷ丸ネオ」の登場により、この点が大きく改善されました。

パプリカは通常、赤・黄・オレンジの3色を揃えて出荷することが求められますが、この3色の生育を同じように揃えるのが難しいという声もあります。栽培適期としては、沖縄や岩手でも9月植えが一般的ですが、「ぱぷ丸」は33度から35度くらいで花落ちが見られます。夏場の収穫では、果実の高温障害が心配ですね。その他、カルシウム欠乏による尻ぐされも発生しやすい生理障害です。

露地で小規模に栽培され、直売所等に出荷される場合はピーマンのように枝(つる)を増やし、剪定をあまりしていない生産者様も見受けられますが、パプリカで枝を8本も出すと管理が非常に難しくなります。

大和農園では土耕栽培の試験を中心に行っていますが、「ぱぷ丸」を栽培されている生産者様の多くは、ココピート培地を使用しているケースが多く、農業生産法人は独自の技術(センサーや環境制御システムなど)で栽培されているところが多い印象で、弊社の栽培環境と大きく異なり、弊社としてはなかなかサポートしきれないのが現状です。そのような中で、御社のような新技術に長けた会社様にぜひ協力頂いて、各種栽培情報の収集や収集データの解析をして頂けると生産者様のさらなる生産量向上につながるのではと私は非常に期待をしています。

「ぱぷ丸」栽培適期表 大和農園HP引用

大和農園(種苗メーカー)の魅力と農業の未来への貢献

―農業の世界に入ったきっかけや、種苗メーカーを選んだ理由を教えてください。

もともと農業に興味があり、大学では農学部で学びました。農業に関わる仕事として、様々な選択肢の中から種苗メーカー(大和農園)を選びました。「品種をつくりだせる」というところに一番の可能性があると感じたからです。ユーザーである生産者様の声を直接聞きながら品種開発を進めていけるので、やれる可能性の範囲が広く、そこに大きなやりがいを感じています。

―今後、特に取り組んでみたい作物や、育の方向性について教えてください

気象条件の変化が最近は甚だしく、生産者様が収益を得られなくなる事態が起きています。そのため、気象変動に対応できる品種を開発することが最優先だと考えており、常に意識しています。現在、日本国内だけでなく海外にもお客さんがいらっしゃるので、今いるお客さんが継続的にお金を得られること、つまり収量が安定して取れることが基本であり、収量が取れなくなることは避けなければなりません。

大和農園で取り扱っている珍しい品種については、意外と「この品種を作ろう」と意図するよりも、研究や試行錯誤という“遊びの延長”でできた品種も存在します。しかし、基本はベーシックな品種の栽培性をより良くすることだと考えています。ブリーダーが担当品目ごとに変わった原種をみつけて、掛け合わせ、創意工夫を行っています。そのアイデアから新しい品種が生まれてくることは、とても面白いと感じています。

ミニパプリカの開発を例に出すと、大きなパプリカは栽培日数がかかるため難しいと感じる方もいるかもしれませんが、サイズを小さくすることで栽培が簡単になり、より多くの生産者様が栽培できるようになります。

まとめ

今回のインタビューは大和農園営業担当の伊澤さんでした。

大和農園さんが生産者の声に真摯に耳を傾け、栽培現場の課題に対し、創意工夫と情熱をもって応えている姿勢を深く理解することができました。

特に、種から「Made in Japan(国産)」であることは、大和農園の大きな強みであると感じました。近年、多くの分野で海外依存度が高まる中、国産品質が日本市場で高く評価されるのは、まさに日本人に合わせて開発された品種だからだと思います。

持続可能な農業を実現させるための大和農園の今後のご活躍に期待が高まります。AGRISTは生育調査や収穫・営農のサポート技術を開発しており、業種は違えど、取り組む姿勢や根底にある想いが同じであることを再確認できました。現場の考えに耳を傾けることの大切さを改めて認識する機会となった今回のインタビューに感謝いたします。

【概要】

名称 株式会社大和農園

URL https://www.yamatonoen.co.jp/

お問い合わせ https://www.yamatonoen.co.jp/contact/ 

HP引用 大和農園グループは、オリジナルブランド品種の育種研究開発を行い、みなさまの食を支えるお手伝いをしております。また、国内及び海外での種苗の卸販売や、家庭菜園の種苗の通信販売も行っております。

     

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