日本のロボット技術は主に産業用ロボットとして製造業などに開発、導入され、発展を遂げてきました。近年、ロボット技術は日本独特の事情のため大きく変化しています。
この記事では、ロボット技術活用の現状、ビジョンを紹介します。
開発経験のある現役のエンジニアにとって、今後のキャリアの参考になるようにまとめました。
世界に対抗すべく動きはじめた「ロボット新戦略」
ロボット技術で社会的な課題解決の実現へ
日本のロボット技術は世界をリードし、イノベーションの象徴とされ、常に他国を圧倒してきました。近年、中国の産業用ロボット発展計画やドイツのロボットとitの融合活用など、世界のロボット事情は変化しています。
対して日本では2015年「ロボット革命実現会議」が実施され、「ロボット新戦略」としてビジョンや戦略、行動計画などを定めました。海外諸国と異なる日本ならではの事情に対処すべく、ロボット新戦略に基づいた「ロボット革命」に取り組まれています。
- センサー、AIなどを活用、ロボットと位置づけられなかった製造物をもロボット化する 例:自動車、家電、携帯電話
- 製造現場から日常生活までの多くの場面でロボットを活用し、
- 製造、サービス分野の競争力強化を通じて、社会的課題を解決し、利便性の高い社会を実現する
ロボット革命実現のための政府施策
政府は、2013年「日本再興戦略」を閣議決定し、ロボット介護機器開発5ヵ年計画の実施など「少子高齢化の中での人手不足やサービス部門の生産性の向上という日本が抱える課題の解決の切り札にする」ことを定めています。
また「日本再興戦略」では、介護分野以外の産業にも幅広く言及しています。具体的には、人材不足分野における働き手の確保、物流の効率化などの課題解決を迫られている日本企業に対して、ロボットの技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の収益力向上、賃金の上昇を図るというものです。
引用:「日本再興戦略」26年改定(厚生労働省)
産業用ロボットにおける今後の課題
日本では少子高齢化が進み、労働生産人口の減少が加速しています。
培ってきたロボット技術を、製造業のみならず他の産業にも応用、活用することで、新たな局面に対処する必要に迫られています。
製造、サービス、介護・医療分野で求められるロボット
製造分野
日本の製造分野では、とくに自動車産業での溶接や塗装、電気・電子産業の部品装填工程などに多数のロボットが導入されました。一方でほとんどの中小企業は、ピッキングや整列、包装、入出荷作業を作業員が行っています。
製造業で使用する産業用ロボットの中でも、低価格で容易に活用できる「協働ロボット」が、近年注目を集めています。
協働ロボットとは、人を危険から守るための囲いなどを設けず、人と共に作業できるロボットを指します。法律で「出力80W以下のロボットは、人といっしょに協働できる」ことが決議されました。
サービス分野
小売業や飲食業などのサービス分野は、製造業ほどではなくとも、単純作業の割合が多いにもかかわらず、現在も人の手で行うことが多いです。
人手のかかるサービス分野での作業をロボットが代わりに行うことで、さらに付加価値の高いサービス提供できることが予想されます。
介護・医療分野
介護や医療の分野では、少子高齢化の進展により、現場で従事する人材が不足しています。とくに介護は身体的負担が大きく、離職率が高いこともあり、将来的に高いニーズが発生すると予想されています。
経済産業省および厚生労働省は、2013年に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定し、介護用ロボットの開発、生産支援に乗り出しました。
しかしながら、介護や医療といった患者、入居者などへセンシティブに対応しなければならない場合、「協働」といった概念がとても重要になります。
ロボットにすべての介護業務を行わせようとせず、介護ロボット活用で業務効率化や省人化すると同時に、人の手による「ぬくもり」を失わない発想、創造力が求められています。
「農業」分野でロボットは注目されている
ロボット技術は、なぜ農業で期待されている?
農業分野でもサービス分野、介護・医療分野同様、ロボット開発、導入が期待されています。なぜ、農業分野へのロボット導入が期待されているのでしょうか?
農業分野は高齢化が著しく進んでいて、かつ若い世代の新規就農が少ない分野です。
このままでは、深刻な労働力不足に陥ることは避けられません。
製造業などに導入されてきた大型で高価、かつ熟達した技術者による操作が必須の産業用ロボットを応用し、介護で使用する小型、低価格で簡単に操作可能な「協働ロボット」の開発が進んでいます。
農業分野のロボットは産業用ロボットと協働ロボットを、農家のニーズに合わせて開発するものです。
さらに、日本の農作物は海外の需要が高まっています。国内の人口減少に伴い国内消費は減少が予想されるものの、世界人口は増え続けるでしょう。
農業従事者の減少、高齢化を補い、増加する海外の需要に対応するために、ロボットの開発、普及が期待されています。
やりがいたくさん、農業分野のロボット開発
農業分野でのロボット開発、導入は製造分野などと異なり、構造化がほとんど手つかずのままのため、やれることがたくさんあります。
農作業の過程は草刈りや収穫、輸送など多岐にわたり、それぞれ異なる技術を必要とします。さらに野菜、果物、米といった収穫物の種類も多いため各々個別の対策が必要です。
農林水産省は、2013年「スマート農業の実現に向けた研究会」を立ち上げました。ロボット技術を活用し、人手のかからない高品質な農作物生産を実現するための新たな農業(スマート農業)を実現するため、企業などの協力をもって検討されています。
具体的なロボット導入の動きとして、ドローンによる上空からの農薬散布はよく知られています。他には地上での作業、中でも多くの人手を必要とするハウス栽培された野菜や果物をロボットが代わりに収穫するロボットの研究、開発が最近注目を集めています。
農業ロボットベンチャー企業の未知の世界の挑戦
農作物の自動収穫ロボットを開発、導入している企業の中でも、ユニークな取り組みとして注目されているのが、ベンチャー企業の「AGRIST(アグリスト)株式会社」(以降「AGRIST社」)です。
AGRIST社は「100年先も続く持続可能な農業を実現する」をビジョンにしているベンチャー企業です。食料課題を解決し、全人類の幸福(ウェルビーイング)に貢献することを目指しています。
新しい機能を追加するより、安価でシンプルなロボット開発をコンセプトにしています。
ヒアリングを通じて今ある性能を高めることが、多くの農家の要望として根強かったためです。
2020年にはaiを活用した農産物の自動収穫ロボットを開発、国が主催するスマート農業実証実験のコンソーシアムメンバーとして参画。また、ENEOSホールディングスと農産物の自動収穫ロボット開発に関して協業を開始し、数々の賞を受賞しています。
最新のロボット技術と農家の要望双方を重視した共同開発は人手不足を解消し、人件費を圧縮、環境制御の向上による収穫量増加が期待されています。
AGRIST社では現在、テクノロジーで農業問題を解決するロボットエンジニアを募集しています。
世界に挑戦するベンチャー企業で経験を積みたい、ロボットエンジニアとしての開発が好き、農業が抱える問題を解決したいという方は、応募してみてください。
AGRIST株式会社 採用サイト
ロボット技術を差し迫った日本の課題に生かすために
日本のロボット技術は、主に産業用ロボットとして製造業などに開発、導入され、発展を遂げてきました。近年、ロボット技術は日本独特の事情のため、大きく変化しています。
ロボット技術活用の現状、ビジョンを、開発経験のある現役のエンジニアにとって、今後のキャリアの参考になれば幸いです。