農業に興味はあるけれど、ちゃんと儲かるか不安で参入を躊躇している企業や個人のお問い合わせをいただきます。
AGRISTでは2022年から実際に農業に参入し、様々な困難に直面しましたがなんとか1年間を通して営農することができました。
今回は実際に農業を経験して「農業で儲かる為に必要な事」を実体験を基に解説します。
農家の収入の現状
農林水産省の発表によると、令和3年度の個人農家の所得は125万円となっています。
売り上げは1076万円あるのですが、経費が950万円以上かかっており、所得が極端に低くなっています。
スマート農業やデジタル化を用いた生産性向上の余地はありますが、他の産業と違って利益率が極端に低く、農業が儲かりにくい構造になっているのは事実です。
また、昨今の光熱費の高騰や飼料価格の増加によりさらに経費が膨らんでおり、特に酪農家は85%が赤字というデータもあり、厳しい経営状況が続いています。
農業で儲かるにために必要なこと
農業で儲けるために大事なのは、下記4つです。
- どこで営農し
- 何を栽培し
- どうやって販売するか
- 経費をどれだけコントロールできるか
具体的にお伝えします。
①営農場所の選定
農業はどこでやるのかが非常に重要です。
下記グラフは、ピーマンの1kg当たりの産地別の価格です。(政府統計の総合窓口を基に作成)
産地である宮崎県の価格が高い傾向にあり、茨城県は近年価格が上昇傾向にあります。
一方で鹿児島県のピーマンは、宮崎県の隣で栽培しているのにもかかわらず、過去10年以上宮崎県よりも価格が低いです。(宮崎県ピーマンのブランド化や産地としての優位性が要因)
様々な変数はあるものの「ピーマンを栽培して売る」ことに限って言えば、どこで栽培するかで売価が変わるのが実態です。
さらに1kgあたりは数十円の違いですが、ピーマン農家は年間に数十トン規模で出荷しますので、最終的な金額の差は非常に大きくなります。
また、近年では輸送コストが増加傾向にあり、消費地(マーケット)近辺で営農することが有利になってきています。
茨城県は首都圏に近い為、輸送コストが安く、鮮度の良い状態で農作物を供給できることも相まって、少ない経費で高く販売ができる環境が整っています。
一方で宮崎県は輸送に多くの費用を使うことになり、経費がかかる営農状況となっています。
2005年頃に茨城県が宮崎県を抜いて日本一のピーマンの産地となりました。
その背景には輸送コストが低く、儲かる構造があります。
➁農作物の選定と戦略の構築
農業で儲かるためには、何を栽培しどのように売るべきかの戦略構築が大切です。
何を栽培し、どう売っていくかで収入の8割は決まると言っても過言ではありません。
農作物の選定については、付加価値の付きやすいトマトやイチゴなどを選択した場合は、既に多くのプレイヤーが存在していて、競争の中に飛び込むことになります。
資本がある企業が勝ちやすいゲームなので隙間を狙って事業をすることが必要です。
一方で私たちが栽培しているピーマンに関しては、需給が比較的安定しており大きく儲かることもなければ、大きくコケることもありません。
比較的戦いやすい農作物と言われています。
農作物のマーケットを理解した上で農作物を選ぶことをおすすめします。
販売戦略においては、
➁量を生産して儲ける(単位面積当たりの収量を上げる)
この2つが代表的です。
農業は他のビジネスと違って、”全量買い取り“と呼ばれる、作ったものを全部買い取ってくれるスペシャルカードが存在します。(市場やJAに出荷した場合)
青果物市況によって価格の変動はありますが、全量買い取りカードを駆使して薄利多売で稼いでいる農家も実在します。
デメリットとしてはプライシング(値付け)ができないことです。
③出口(販路)の確保
先に述べたように、農業は全量買い取りのカードを貰う反面、プライシングができません。
JAや市場は生産物を全量買い取ってくれますが、価格は需給バランスによって決まります。
そのため、昨日1kg/¥400だったピーマンが、今日1kg/¥200なんてことも起こり得ます。
将来的な経営戦略や投資がしにくい構造となっており、ここがネックで販路を開拓する農家もいます。
販路を開拓する場合はプライシングができる反面、契約の内容によっては供給責任が発生する場合もあり、不作の時に苦労するケースもあります。(月に1tの契約をして収量が低く1tに満たない場合は、他から買い取って補填するケースもあります)
また、市況が高値で推移しているときにも定額出荷となりますので、販路開拓にも一長一短あるのが実情です。
④経費のコントロール
冒頭でも記載しましたが、125万円の所得を得るために950万円以上の経費を使っているのが農家の現状です。
資材、重油、肥料代などの価格が高騰していますが、農作物に価格転嫁できておらず苦しい経営を強いられています。
そのため農業で儲けるは、この経費をいかに削減できるかが勝負でもあります。
例えば、冬場にビニールハウスを温める際に、工場の廃熱を利用したり、大分県では古くから温泉熱を使用したり、経費を抑える営農をしています。(農水省の事例にもユニークな取り組みが紹介されています)
その他にも先に記述した、消費地に近い場所で営農し輸送の経費を抑える方法や、独自に販路を開拓し出荷手数料の経費を抑える方法もあります。
これらを踏まえた農業の6次産業化という取り組みも盛んに行われています。
儲かっている農家の特徴
大規模化している
農業はスケールメリットのあるビジネスです。生産量や生産規模を大きくすればするほど利益が出ます。
更に、10㌃で営農する場合と30㌃で営農する場合の経費に大きな差が無く、規模を大きくすることで経費を圧縮できる効果もあります。
儲かっている農家は規模を拡大しスケールメリットの恩恵を受けています。
全てをやり切っている
儲かっている農家は組織の戦略(高付加価値化・薄利多売・マーケット近辺での営農・ブランディング….etc)が確立されており、戦略がしっかりと構築されています。
また、先ほど述べたような経費のコントロールにも工夫がなされています。
これをやり切るかどうかが、儲かるか儲からないかの分かれ道です。シンプルにやり切ったプレイヤーが儲かっているように思います。
農業のリスク
実は2022年の台風14号で、AGRISTが運営する圃場が被災しました。
特に養液栽培のハウスでは、定植したばかりの苗1000株と養液栽培の土台が全て廃棄となってしまいました。
定植後すぐ被災したので何とかリカバリーできましたが、ある程度大きく育った状態だったり、収穫中に被災したら、その年は棒に振ることとなっていました。
天候の他にも病害虫問題や、供給過多(豊作)による価格の暴落、など予期せぬリスクがあることを覚えておきましょう。
まとめ
農業で儲かるためには、
- 営農場所の選定(マーケットに近いと有利)
- 作物の選定
- 戦略の構築(付加価値を付けるor量を取る)
- 販路の構築(市況に左右されない安定収益)
上記のような工夫が必要です。
以上が、農業で儲かる為に必要なことの解説記事でした。
AGRISTでは、農業参入を検討している企業向けのコンサルティングや、収穫ロボットを使用した次世代農業の提案を行っております。
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