農業生産法人がリードする「攻め」の経営
日本の農業は、食料供給を支える重要な産業です。しかし、同時に様々な労働災害のリスクも抱えています。特に、高所からの転落・落下事故に加え、肉体的な負担や過酷な環境下での作業による事故も深刻な課題です。脚立やはしごを使った収穫作業、ハウスの管理、高所での設備点検など、農業現場には想像以上に高所作業が多く存在します。これらの作業中にバランスを崩したり、足場が不安定だったりすることで、重大な事故につながるケースが見られます。
このような事故は、農業に従事する方々の命に関わるだけでなく、経営にも大きな打撃を与えます。怪我による労働力の一時的・恒久的な喪失は、収穫量の減少や作業の停滞を招き、経営を圧迫しかねません。さらに、農業の担い手不足が深刻化する中で、安全面での不安は、若い世代や異業種からの農業参入をためらわせる要因にもなっています。安全が確保されなければ、未来に向けた持続可能な農業の実現は困難になるでしょう。

引用:厚生労働省 https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/000843277.pdf
「安全第一」は農業生産法人にも不可欠
この転落事故防止は、規模の大小に関わらず、全ての農業生産法人にとって重要な経営課題です。企業として農業に参入する際、生産性や収益性ももちろん重要ですが、それ以上に従業員の安全確保は最優先されるべき事項です。安全管理が徹底されているかどうかは、企業の社会的責任(CSR)を示すバロメーターにもなります。
転落事故の防止に役立つ取り組みを紹介します。
- 安全な作業環境の整備:不安定な足場での作業を避け、必要に応じて高所作業車や、事故防止のための安全帯を使用する。
- 適切な器具の使用と点検:はしごや脚立は安全基準を満たしたものを選び、使用前には必ず点検する。古くなったものや破損したものは使用しない。
- 安全教育の徹底: 作業員全員に対し、高所作業のリスクや正しい作業手順、緊急時の対応などを定期的に教育する。
- 機械化・自動化の推進:危険な高所作業を減らす技術の導入を検討する。
特に、近年進化を遂げているスマート農業技術は、安全性の向上に大きく貢献します。例えば、AGRISTが開発する自動収穫ロボットは、これまで人が行っていた重労働や反復作業を代替します。これにより、作業者の身体的な負担や疲労を軽減し、それに伴う様々な事故のリスク(転倒や不注意など)を低減することが可能になります。これは、作業者の安全労働環境を守るだけでなく、効率的な生産活動にも繋がるソリューションです。
農業生産法人が担う責任
農業は、私たちの生活に不可欠な食を供給する、非常にやりがいのある仕事です。新規就農を検討する方や、異業種からの参入を考えている方が安心して農業に取り組める環境を整えることは、新たな担い手を増やす上で極めて重要です。
安全な作業環境は、単に事故を防ぐだけでなく、従業員が長く安心して働ける職場を育み、ひいては企業のブランドイメージ向上にも貢献します。「安全第一」の精神で取り組む農業生産法人こそが、未来の日本の農業を支え、発展させていく原動力となるでしょう。