スマート農業におけるロボットの導入事例|背景や解決すべき課題も紹介

スマート農業

スマート農業はロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用した農業です。農業にアナログ的なイメージを持つ人も多く見られますが、今後は農業にもロボットが大いに活躍する必要があります。この記事では、スマート農業にロボットが求められる背景やスマート農業におけるロボット技術の開発課題、具体的なスマート農業向けロボット技術について紹介します。

スマート農業でロボット技術が求められる背景

スマート農業にはロボットやICT技術が欠かせません。未来の農業を支える技術として作業の自動化や情報共有の簡易化、データの活用が急務とされる背景を解説します。

農業従事者の減少

※参考:農林水産省|2015年農林業センサス

スマート農業の実現手段としてロボットに注目が集まっている理由のひとつに、農業従事者の減少があります。

農林水産省の統計によると、国内の農業に従事する就業人口は1995年の時点で約414万人でした。しかし20年後の2015年になると210万人とほぼ半減しています。2015年における農業従事者は65歳以上の高齢者が63.5%を占めており、農業に従事している人が今後も同じ活動量で働き続けることは難しいでしょう。

一方50歳未満の農業従事者は約25.1万人と全体の12.0%であり、この人員を中心に未来の農業を支えていく必要があります。

1人当たりの農地面積の拡大

農業従事者が減少しても農地は大きく変動しないため、計算上は1人が対応する農地面積も広くなります。先の統計をもとにすると、1995年には1経営体当たりの平均経営耕地面積が1.6haだったのに対して、2015年には2.5haにまで拡大しています。

少ない人数でより広い農地に作付けをするとなると、今までと同じ方法では管理に人手が足りません。そのため1人が対応できる作業面積を拡大させる方法として、スマート農業のロボット技術が求められています。

QCDの向上

製造業などで言われるQCD(品質・コスト・納期)の向上は、農業にも当てはまります。消費者のニーズに応えつつ、輸入される農産物などよりも魅力がある作物が収穫できなければ、市場では勝てません。

スマート農業として、農業を行う場所の適切な管理しながら収量量や品質を高めるためには、「作業方法の改善」「コスト削減」「労働負荷の低減」「作物に付加価値をつける」などの工夫が求められます。市場競争力を強化するためにもロボットを活かす余地があるのです。

ロボットの導入で解決すべき農業の課題

スマート農業に携わるロボットエンジニアは、まず現場と現場がかかえる課題をよく知ることが重要です。ここでは現状農業が抱えている課題をご紹介します。

省力化・大規模生産化

同じ作付面積でも、いろいろな場所に農地が点在していて移動や手作業の手間がかかるよりは、広大な農地に大型の農業工作機などを導入して一気に作業ができる方が効率がよくなります。しかし国内の水田や畑などの圃場(ほじょう)は細切れになっているところも多く見られます。

省力化や大規模生産化には、自動走行ロボットが役立ちます。ただし圃場は起伏や凹凸が多く、ロボットが動きやすい地面であるとは限りません。どんな場所でも安定して走る技術や作物の状況を的確に監視できる技術が必要です。

作物のポテンシャルを活かした精密農業

農業は経験が重視される場面も多くあります。農業従事者が減少する中で、いかにして今まで積み上げてきた過去の経験を、ノウハウとしてロボットに吸い上げるのかが重要です。

これに対しもしロボットにAIが搭載できれば、ベテランの農業従事者のように深い知識と判断力を活かした精密農業が可能になります。また、ロボットにセンサーと蓄積されたデータを組み合わせれば、遠隔監視や制御の余地が生まれます。土地をうまく利用した農業の自動化や精緻化を図ったり、生育環境を適切に管理したりするロボットが待ち望まれています。

きつい作業・危険な作業からの解放

「人手が足りない」「収穫する人がいない」となると、日々の除草や収穫した農産物の運搬、水やりなど一つひとつの工程がうまく回りません。ロボットを活用することで、一部の作業を人に代わって行うことができます。

また、農業は立ち座り動作や力仕事も多い業種です。ご高齢の方や女性のように力が弱い人にも効率的に農業が行えるように、パワーアシストスーツなどもあると日々の作業が楽になります。

スマート農業で開発中のロボット事例3選

ここでは、スマート農業として実際に開発が進んでいるロボットの事例を紹介します。

除草ロボット

除草ロボットは、作物を植えつけた条(じょう)や畝(うね)の除草を行うロボットです。遠隔操作で畦畔(けいはん:水田周辺の盛土)や法面など不安定な場所の除草を行ったり、雑草が伸びたりしてい場所を自分で判断して最小限の除草するロボットが求められています。

除草ロボットを確立するには、「遠隔操作」「不安定な場所での自動走行」「土壌・雑草・作物の識別アルゴリズム」「異常時の緊急停止機構」などの技術革新が重要です。

パワーアシストスーツ

パワーアシストスーツは、中腰姿勢や上向き作業をサポートしたり荷物を上げ下げする場合の体への負担を軽減したりするものです。収穫・運搬時の積み込みなどの負荷が軽減すれば、作業時間を短くすることも可能です。

パワーアシストスーツには、「本体重量の軽量化」「着脱の簡易化」「防水機能」「冷却機能」「高容量バッテリー」「安全性ガイドライン整備」などの技術向上が期待されています。

収穫・パック詰めロボット

収穫・パック詰めロボットとは、作物の収穫から出荷までの単純労働を自動化する目的で開発されています。すでにピーマンやイチゴの収穫ロボットや選別・パック詰めロボットなどが実用化されています。

ロボットは、どれが収穫時期かを認識したり作物の間を移動したりする時間は人に劣るものの、理論的には夜間や休日も連続して作業が可能です。年間累計収穫量としてみた場合は人間が収穫する水準が維持できます。

そこで収穫・パック詰めロボットでは、「センサーやAIを使った対象物認識精度の向上」「マニピュレータ、ハンドの動作精度向上」などが重要です。

スマート農業はロボットの開発が不可欠

農家が抱える最大の問題は人手不足です。未来の農業従事者が減少する可能性を考えると、単に農業従事者を増やしたりベテラン農家の経験だけに頼ったりしながら農業を維持していくのは難しいことだといえます。スマート農業のロボット技術では、農業が解決すべき課題やロボットの開発における要素技術を踏まえた技術革新が欠かせません。

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