「エンジニアが活躍し、世界の農業課題を解決する会社をつくりたい」代表取締役 秦裕貴

新富町の多くの農家から、勉強会で4年近く自動収穫ロボットの必要性を聴き、AGRIST株式会社を創業しました。勉強会でも農家からあがっていた「100年先も続く持続可能な農業」の実現をビジョンに掲げています。
新たなロボットを作り出すというよりも、農業課題の解決というところに重点を置いています。農家(顧客)の問題を解決するためにどんな物が必要かを考え、ロボットの在り方を考えて農家に提供していきたいです。

AGRISTのロボット開発には他社にはない強みが大きく2つあります。1つ目が開発拠点を農家のビニールハウスの近くに設置している点です。それにより、顧客の声を聞きながらよりスピード感のあるPDCAをまわしながら開発を行っています。
2つ目は、ロボットをつくるだけではなく、自分たちで農業をやり持続可能なビジネスを作るという、農業ビジネスとテクノロジーをかけ合わせている点です。この2点があることで”安価で汎用性の高い”ロボットを使った農業パッケージをスピード感をもって世界中に拡大し、Aiを活用することで世界の農業課題を解決をしていけると考えています。
その中で重要なのが、全てをロボット化しない「人とロボットのバランス」です。僕達の考え方は「人がやるべき所は人が。ロボットがやるべき所はロボットが。」という考え方です。
そうすると、人はより創造的な仕事に集中できるようになります。僕が思う農業のデジタルトランスフォーメーション(DX化)の真髄です。 一緒に自動収穫ロボットの開発で農業課題の解決に取り組み、『全人類の幸福・Well-being』に貢献しましょう。
秦 裕貴 AGRIST株式会社 代表取締役
1993年、福岡県福津市生まれ。モノづくりが好きで北九州高専に進学。2016年、高専専攻科卒業と同時に就農を志すも収益の不透明さから断念。高専内で活動していた学発ベンチャー企業合同会社Next Technologyに参画。特殊用途3Dプリンタや産業用ロボットの開発に従事、同社代表を務める。
2019年に宮崎県新富町・こゆ財団との出会いをきっかけにAGRIST株式会社を創業、CTOに就任し宮崎へ移住、2022年からは同社の代表取締役に就任。
自動収穫ロボットを中心に、農業現場に根ざしたテクノロジー活用によって農業の生産性向上と持続可能な農業の実現を目指している。 ロボット大賞2022農林水産大臣省受賞、CES2023 INNOVATION AWARD受賞 等
お金からギフトへ、社会をめぐる循環の中で生きる
AGRIST 代表取締役 斎藤潤一

若い頃、私は「ビジネスとはお金を稼ぐ技術」だと信じていました。
シリコンバレーでスタートアップを経験し、スピードと資本の力を肌で感じました。成果と効率を競う世界の中で、稼ぐことこそが成功だと思っていたのです。
しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに価値観が大きく変わりました。
人の命や暮らし、地域社会のつながりがいかに脆く、同時に尊いものであるかを痛感しました。その経験から、「お金を稼ぐこと」よりも「社会をより良くすること」に自分の力を使いたいと考えるようになりました。
お金や技術は、自分が生み出したものではなく、社会から一時的に預かったギフト。
それを再び社会に還元していくことで、新しい循環が生まれる。この「ギフトエコノミー(贈与の循環)」の考え方が、私の人生観の中心にあります。
スタンフォード大学で授業を受けた際、印象に残ったのは「イノベーションとは技術ではなく、人間理解から生まれる」という言葉でした。Appleが倒産寸前から世界を代表する企業に変わった背景にも、人の感情と行動を深く理解した思想がありました。
その学びを日本に持ち帰り、2017年に宮崎県新富町役場が立ち上げた「こゆ財団」は、地域商社として地元農産物をブランド化し、ふるさと納税を通じて町に100億円以上の経済効果をもたらしました。
その取り組みは国の地方創生優良事例にも選ばれ、**“ビジネスで社会課題を解決する”**という私の信念が形になった瞬間でした。現場に立ち、人と人の関係性を再生する中に、経営の本質があると確信しました。
2019年に創業したAGRISTでは、AIとロボットで農業課題の解決に挑戦しています。人手不足、高齢化、環境負荷といった社会課題に対して、テクノロジーで現場を支える。マイクロソフトとの共創により開発した「AGRIST AI」は、鹿児島の自社農場で反収あたり28.6%の収益改善を実現しました。
経営とは、社会の問いに対して自分なりの答えを出す行為です。AIもロボットも、人間がより良く生きるための道具であるべきです。
私の人生のバイブルは、野田智義先生の『リーダーシップの旅』です。リーダーとは肩書きではなく、自分の内面と社会の関係を探求し続ける存在であるという教えに共感しています。完璧を求めず、問いを抱えたまま歩き続ける。
その過程で得た学びや経験を、次の世代へとつないでいく。それが私にとってのリーダーシップであり、使命です。ビジネスは、社会の中での「贈り物のやり取り」だと思っています。
社会からもらった機会や知恵を、自分なりの形で返していく。その循環の中でまた新しい可能性が生まれる。
お金を稼ぐことに始まり、社会に還元することで終わる。そんな円を描くように生きていきたい。それが、私という経営者の人生観であり、未来への約束です。
代表取締役 斎藤 潤一(さいとう じゅんいち)
1979年 大阪府生まれ奈良県育ち。 米国シリコンバレーのITベンチャー企業で音楽配信サービスの責任者として従事 2006年 東京表参道でデザイン会社を設立。大手企業や官公庁のデザインプロジェクトで多数実績をあげる。 2011年の東日本大震災を機に「ビジネスで地域課題を解決する」を使命にNPO活動を開始。テレビ東京「ガイアの夜明け」出演。全国で10箇所以上で地方創生プロジェクトに携わる 2017年 新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。 1粒1000円ライチのブランド開発やふるさと納税で寄付金を累計100億円集めるなど、18年には総理大臣官邸にて国の地方創生の優良事例に選定される。 2019年 地域の農業課題を解決するべく農業収穫ロボットを開発するAGRIST株式会社を設立。代表取締役就任。 ベンチャーキャピタル、地域金融機関などから資金調達。