出資を決めた理由は現場主義のロボット開発−株主インタビュー:株式会社ドーガン・ベータ様

2021年 インタビュー

株式会社ドーガン・ベータ
『金融の地産地消』を目指すベンチャーファンドを複数本運営。「IPO を必須としない」という前提のもと、長期・少額投資スキームを組むことで、志の高い新規スタートアップ/ベンチャー支援を行い、九州のベンチャー・エコシステムを育成することを目指している。また、アントレプレナーシップを広義に解して、九州地区を主な拠点とする中小企業の新規事業展開、第二創業に対しても、「資金」「経営」の両面からハンズオン支援を行い、企業及び地域の活性化に貢献。今回、地域経済活性化に貢献するという観点から、ピーマン・きゅうりの収穫の人手不足という地域の農業課題を解決するAGRIST株式会社に出資。

・津野 省吾氏:株式会社ドーガン・ベータ ファンドマネージャー
(以下 敬称略)

吊り下げ式のロボットをみたときの衝撃

津野 省吾氏:株式会社ドーガン・ベータ ファンドマネージャー

齋藤:AGRISTに出資をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

津野:もともと齋藤さんとは前職時代からの繋がりがきっかけです。

10年弱くらいの長い付き合いの中で、齋藤さんの人となりについてはすでに知っていて、いつかスタートアップするのだろうなという期待感を持っていました。起業してくれたらめちゃくちゃ面白いだろうなという前提がありました。

このような関係性があった上で、齋藤さんからスタートアップをやろうという決意を聞いて、ワクワクしましたし、正直嬉しかったです。

そして、現場で試作機をみて吊り下げ式のロボットというアプローチがすごいなと。まるでロープウェイのように稼働する、他にはない衝撃的なアプローチだったので、ファーストステップとして、投資を検討したいなとなりました。

開発する拠点が新富町ということで、農場が近くという立地を活かして、PDCAをすごいスピードで回転できるというのは大きな強みだと感じます。

農家の福山さんがアウトプットしたものをどんどん開発に活かしていくということが非常に面白いと思いました。

これは、ロボットの実現可能性とは別のポイントではありますが、開発から製品化までの時間を通常のロボット開発より短縮できるのではないかという期待感に繋がります。

これも、投資を決めたきっかけの一つです。

起業家は孤独。巻き込み力が大事

AGRIST株式会社 代表 齋藤潤一

齋藤:津野さんが考える起業家にとって重要は要素とはなんですか?

津野:起業家に必要な素質の一つとして、巻き込み力というものは非常に重要な要素だと考えています。

齋藤さんには「ふと気づいたら、なんか巻き込まれてない?」という部分を普段の付き合いの中で見ていましたし、実際にAGRISTでも巻き込み力を活かして、いろんな事業ネットワーク構築やチームビルディングをされています。これは起業家としての大きな評価ポイントです。

齋藤:なぜ巻き込み力が大事だと思うんですか?

津野:最初にスタートアップした段階では、基本的に起業家は孤独なものですし、一人で出来ることには限界があります。巻き込み力のある起業家は、ふと気づけば周りに仲間が増えてたり、色んな支援を受けてたりします。

会社には、プロダクトを開発する人がいれば、マーケティングを開発する人がいたり、お金を集めてくる人がいたりというもの。

多様なプレイヤーが揃って初めて会社として成長していくものだと考えているので、チームビルディングにおいて巻き込み力は欠かせません。

齋藤:確かに、分業専門性を高めるということは、ベンチャーにおいて重要だと感じます。AGRISTでは、農家の福山さんの近くで事業開発を行っている点で、PDCAを回しやすい。これは東京のスタートアップにはない部分だと思っています。

地方のスタートアップだからこその強み

アドバイザー農家 福山氏

津野:プロダクトアウトにならないのは大事なことです。少し車で行けば農家さんがいて簡単に話ができるのは非常に恵まれた環境です。

しっかりと潜在的な顧客の声を聞ける環境にあるということですから。農場が近くにあることでロボットをすぐ動かすこともできる。これは、宮崎ならではというか、農業地域でしかできないビジネスモデルだと感じましたね。

齋藤:顧客の声を聞くということは、基本中の基本です。東京のスタートアップだと、プロダクトアウトになりがちでした。

例えば、超大型の買えない、あるいは農場で使いづらい農業ロボットがこれまで開発されてきたのもここに起因する可能性があります。

また、人間が移住してやっているという形は、日本の地方創生のモデルとマッチしているとも考えられます。

AGRISTのロボットは顧客視点

ピーマン自動収穫ロボット「L」

齋藤:実際に投資をしてみてどうでしたか?

津野:スタートアップとして、困難はそれなりにあるはずですが、チームビルディングがスピーディにできているという印象を持っています。また、ピッチイベントで次々と賞を取られているのもすごいですね。

齋藤:2021年9月まで11の賞を獲得させていただいたと思います。

津野:高橋さん(AGRIST株式会社取締役COO 高橋慶彦)のプレゼンが回を重ねるごとにうまくなっています。ピッチイベントごとに求められる内容は変わってくるものですが、ビジョンやミッション、事業の魅力、解決したい課題が非常に伝わるような、共感が得られるようなプレゼンになってきている感じがしますね。

齋藤:いろんな講演で話すことでもありますが、AGRISTのビジネスプランが現場主義の上にあるというのが大きいと思います。農業課題は日本全体の課題である大きな問題です。解決しないとまずいよねという全体的な雰囲気になっているという側面もありますね。

津野:現在、農業だけではなく、様々な分野で数多くのロボットが開発されています。その中で、AGRISTのロボットはどう使うのかをイメージできているプロダクトだといえるでしょう。特に、福山さんが実際に開発に参画していることもあり、顧客視点で訴求性が高いプロダクトになっている。

例えば、無駄な機能はつけないとか、シンプルで安く仕上げられるようにというところです。しっかりと市場とニーズと顧客をしっかりと捉えているという感じがします。


将来的には宮崎県から世界の食糧問題を解決するベンチャーに成長してほしい

齋藤:AGRISTには今後どのように成長していってほしいと思いますか?

津野:まずは日本の農業課題を解決していくと同時に、世界の農業課題を解決して欲しいですね。

食料問題は日本に限った話ではありません。だからこそ、御社が目指している世界の食糧問題の解決までしっかりと持っていってほしいと思います

日本式の農業を世界に持っていくパッケージの中にAGRISTのパッケージが入っているイメージでしょうか。AGRISTはソーシャルビジネスという立ち位置でも、ロボットの技術を広めていけると思います。

齋藤:AGRISTに世界を目指して欲しいと思われるのはなぜですか。

津野:宮崎人としての個人的な思いとして、宮崎から世界で活躍するスタートアップが生まれてきて欲しいです。

地方出身の若い人たちが東京へ出て帰ってこない現状がある背景には、チャレンジしたいけどできない環境、雇用の多様性がないという地域経済の課題も大いに関係しているでしょう。

世界で活躍する会社が宮崎にあれば、宮崎へ帰ってきたい若者が増えてくるのではと考えております。

宮崎出身者のみならず、他県出身の優秀な人材が宮崎に集まり、宮崎で起業しようという人が増えてくれば地域経済が活性化するのではという期待感を持っています。

齋藤:その視点は、改めて根っこの部分で共感できていると感じます。AGRISTの本社がある新富町は人口1万7千人。そこから上場企業が生まれたらかっこいいし、活気付きます。結果的に経済活動も活発化してくれば、みんなにインセンティブがあるはずです。

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